アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、よくなったり悪くなったりを繰り返す痒みを伴った湿疹のことをいいます。乳幼児期から発症し、小児期に落ち着く場合もあれば、良くなることなく再発を繰り返しながら成人になってもアトピー性皮膚炎の症状に悩まされることもあります。
アトピー性皮膚炎は、「皮膚バリア機能障害」・「アレルギー炎症」・「かゆみ」という3つの要素がお互いに関わり合いながら悪循環をきたすことで発症します。
皮膚は、表面の皮脂膜やその下の角質細胞、角質細胞間脂質などがバリアの役割を担っており、外からの異物の侵入や水分の蒸発による皮膚の乾燥を防いでいます。アトピー性皮膚炎では、これらの「皮膚のバリア機能」が弱まっているため、外からの異物が容易に皮膚の中まで入りこみやすい状態になっています。「皮膚のバリア機能障害」はもともとの体質もありますが、皮膚をひっかいたりこすったりといった物理的な刺激や、汗、石鹸、化粧品、紫外線などによっても低下します。
アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能が弱まっているため、外からの異物(刺激物質・アレルゲンなど)が皮膚の中まで入り込みやすくなっています。
皮膚の中まで侵入した異物は炎症をまねき、その結果、かゆみを引き起こします。かゆみのために皮膚をひっかくと、その部位の皮膚を傷つけて皮膚症状をさらに悪くさせたり、バリア機能をさらに弱めたりすることによって、かゆみが強まるという悪循環に陥ります。
炎症の程度を知るために、血液検査で血清IIgE値や末梢血の好酸球数、血清TARC値などを測定します。
また悪化因子を知るためにアレルギー検査を行います。アレルギー症状を起こしやすい39種類のアレルゲンを採血を行い、検査することも可能です。
(乳幼児の方に対しては当院では血液検査ができませんので、かかりつけの小児科でご相談ください)
アトピー性皮膚炎の一番基本の治療です。
古くから使われているステロイド外用剤に加え、ステロイド以外の抗炎症外用剤であるプロトピック軟膏(タクロリムス)・コレクチム軟膏(デルコシチニブ)・モイゼルト軟膏(ジファミラスト)を使います。
また、低下した皮膚のバリア機能と保湿の回復のためにはスキンケアがとても重要です。
皮膚を清潔に保ち、保湿剤を使うことで皮膚のバリア機能を回復させ、アレルゲンの侵入を予防します。
アトピー性皮膚炎の方には、外用加療を行うと軽快するが中止すると短期間で再燃することを繰り返す方がいらっしゃいます。湿疹の再燃を短期間で繰り返す方は、外用加療を行うことで、一見ましになったように見えても皮膚の奥で目に見えない炎症が残っており、外用を中止することで、奥に残った炎症が再び悪化し湿疹が再燃します。その場合は、湿疹が軽快した後も外用加療を続けることで目に見えない炎症を抑え、湿疹の再燃を予防していきます。しばらく安定した状態が続いてから、連日外用から隔日外用、週2回外用など徐々に外用回数を漸減していく方法を指導させていただきます。
上記の治療でコントロールが不十分な中等症以上のアトピー性皮膚炎の方に対して、新しい薬剤が増えてきました。
生物学的製剤とはバイオテクノロジー技術によって生み出された医薬品で、生物が合成する物質(たんぱく質)を応用して作られた薬です。
アトピー性皮膚炎の「かゆみ」を誘発するサイトカインであるIL-31をターゲットとしたヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体である生物学的製剤で、2022年に発売されました。アトピー性皮膚炎ではかゆみを伴うことが多く、かゆみに伴う掻破は、皮膚症状を悪化させ、さらに痒みが増強するという悪循環を繰り返してしまいます。アトピー性皮膚炎のかゆみにはIL-31が中心的な役割を果たしていると考えられており、ミチーガはIL-31受容体ををターゲットとする薬剤であり、既存治療で効果が不十分なアトピー性皮膚炎のかゆみを抑制する効果が期待できます。6才以上の方が適応となります。
4週間に1回の頻度で注射をします。最初は当院で注射させていただき、慣れてきたらご自宅で注射を続けていただきます(自己注射)。
JAK阻害薬は細胞内の免疫活性化シグナル伝達に重要な役割を果たすヤヌスキナーゼ(JAK)に対する阻害作用を示し、免疫反応の過剰な活性化を抑制することでアトピー性皮膚炎を改善する薬剤です。
*JAK阻害薬内服加療の導入は当院ではしておりませんので、適応となる場合は総合病院へ紹介させていただきます。